クラウドのアジリティ
クラウド アジリティとは
クラウド アジリティとは、クラウドベースの環境でアプリケーションを迅速に開発、テスト、ローンチする能力のことです。スポーツと同じように、アジリティを備えていれば、環境や課題の変化にも簡単かつ迅速に対応できます。
クラウド アジリティがビジネスにメリットをもたらす理由
クラウド アジリティがなぜビジネスに有益かと言うと、アジリティがなければ、絶えず変化するIT環境が成長の妨げとなるためです。迅速な反復と短い処理時間により、収益性とイノベーションを維持できます。
クラウド アジリティが競争力の向上に役立つ理由
アジャイル環境では、テクノロジーの急激な変化によって生じる脅威が減るため、クラウド アジリティが競争力の向上につながります。クラウド アジリティは、お客様とユーザーに幅広い選択肢とコンピューティングリソースへの迅速なアクセスを提供しますが、この2つの要素が今日の競争の激しい市場で成功の鍵となります。
クラウド アジリティに関する課題
アジャイルなクラウドコンピューティング環境への移行にはプロセスの変更が必要となることが、従業員にとって課題となっています。たとえばDevOpsチームは、はるかに短時間での処理と反復作業に慣れなければなりません。かつては、プロジェクトのビルドサイクルが数か月に及ぶことがありましたが、アジャイルクラウド環境ではこうした反復サイクルが2週間ほどになり、この期間に、影響の少ない小規模なアップデートが作成されます。
また、ハイブリッドクラウド環境への移行はイノベーションには有益ですが、適切なトレーニングやスキル開発を受けていない技術スタッフや管理スタッフにとっては障害となります。企業のハイブリッドクラウドソリューションへの投資では、クラウドの専門知識を通じて現在および将来の従業員のスキルアップに取り組み、最初の移行時だけでなく継続的変更もサポートすることを考慮する必要があります。
クラウド アジリティは、迅速な拡張とイノベーションにより、市場やテクノロジーの変化に迅速に対応する機会をもたらします。しかし組織が、クラウド環境で利用できる堅牢な組み込みのセキュリティツールを実行するための専門知識を持たず、トレーニングを実施していなければ、こうした変化によってセキュリティ上やコンプライアンス上の課題が生じる場合があります。
最後に、従来型ITからクラウドアジャイル環境への変更管理と実装が障害となる可能性があります。
クラウド アジリティとクラウドコンピューティングの関連性
クラウド アジリティは、一方が他方のメリットとなる、クラウドコンピューティングに関連しています。クラウドコンピューティングとは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、またはハイブリッドクラウド環境を問わず、クラウドで実行されるすべてのコンピューティングアクティビティを指します。それに対してクラウド アジリティは、通常は市場の変化に対応するために、アプリケーションやソフトウェアをクラウドで迅速に開発、テスト、展開する能力と定義されており、バリューステートメントを意味します。
つまり、クラウドコンピューティングとは、コンピューティングにおけるリソースのプロビジョニングと維持を指し、クラウド アジリティとは、セキュリティ、監視、分析などの問題を指します。
クラウド アジリティの原則
クラウド アジリティの主要原則により、企業はクラウドコンピューティングを活用して柔軟性と拡張性を向上させ、イノベーションを推進できます。
- 柔軟性: クラウドの柔軟性とは、リソースのスケールアップ/ダウンにより、ワークロードが増大したときに追加リソースを提供し、不要になったら解放することで、需要の変化に対応する能力を指します。
- DevOps: ソフトウェア開発ライフサイクルの短縮と製品品質の向上に役立つ戦略が含まれます。継続的インテグレーション/継続的デリバリ (CI/CD) と呼ばれる一連の手順によってソフトウェアの開発、テスト、展開を自動化します。
- 自動化: 自動化機能によってリソースのプロビジョニング、構成、管理を強化します。冗長な作業を効率化して手動の業務を減らし、機能は犠牲にすることなくアプリケーションの展開を迅速化します。
- サービス指向アーキテクチャー: アプリケーションにSOAアーキテクチャー内で疎結合されたサービスが含まれており、簡単に開発、展開、更新できます。
クラウド アジリティの主な構成要素
アジャイルなクラウドコンピューティングの次のような要素がクラウド環境の適応性を向上させます。
- Infrastructure as code (IaC): 機械判読可能な構成ファイルまたはスクリプトを使用してインフラストラクチャのリソースを管理およびプロビジョニングするプロセスが、Infrastructure as code (IaC) と呼ばれています。IaCにより、企業はインフラストラクチャのリソースをこれまでより簡単かつ一律に、また自動的に管理できるようになり、クラウド アジリティ、効率、拡張性が向上します。
- 自動化: ツールを使用してクラウド環境のプロセス (自動リソースプロビジョニング、構成、展開、および監視) を自動化し、すべての業務を取りまとめて手動の業務を減らし、アジリティを向上させます。
- コンテナ化: コンテナ化によってアプリケーションと依存関係をカプセル化することで、軽量かつポータブルなアプリケーションのパッケージ化と展開が可能になります。また、迅速なアプリケーション展開、拡張性、マイクロサービスアーキテクチャーの導入を実現できます。
- マルチクラウド/ハイブリッドクラウド戦略: マルチクラウド/ハイブリッドクラウド戦略により、プライベートクラウドとパブリッククラウドを統合して柔軟性とアジリティを向上させます。組織は、さまざまなプラットフォームにワークロードを割り当てることでベンダーロックインを回避しつつ、拡張性と制御性のバランスを維持できます。
- DevOpsとCI/CD: DevOpsの実装により、開発チームと運用チームのシームレスなコラボレーションを実現して開発を迅速化します。企業はCI/CDパイプラインを利用してソフトウェアの設計、テスト、展開を自動化することで、ソフトウェアソリューションを迅速にローンチして市場ニーズの変化に対応できます。
DevOpsと継続的インテグレーション/継続的デリバリ (CI/CD) がクラウド アジリティの向上に役立つ理由
DevOpsとCI/CDは、以下の重要な概念に従ってクラウドコンピューティングのアジリティを向上させます。
ソフトウェア開発ライフサイクルを短縮してソフトウェア品質を向上させるため、DevOpsと呼ばれる一連の手順では、ソフトウェア開発 (Dev) にIT運用 (Ops) を統合します。それによってアップグレードや新機能を迅速に展開できるようになり、常に競合他社の一歩先を行くことができます。
CI/CDでソフトウェアの開発、テスト、展開を自動化します。それにより、開発サイクルの初期段階でプログラムのボトルネックを追跡し、品質を向上させることができます。また、展開プロセスを自動化することで、新しい機能やアップグレードを迅速にリリースできます。
DevOpsとCI/CDは、チーム間のコミュニケーションとコラボレーションを強化してタスクを自動化し、変更の本番環境への展開をサポートすることで、クラウドアジャイルコンピューティングを支援します。
クラウド アジリティを実現するコンテナオーケストレーションプラットフォーム
コンテナオーケストレーションプラットフォームは、クラウド アジリティを向上させるうえで重要な役割を果たします。たとえば、Kubernetesは、クラウドコンピューティングのアジリティ向上に役立つ次のような特徴を備えています。
- 自動スケーリング: 需要の変化に応じてコンテナ化アプリケーションを自動的にスケールアップ/ダウンし、必要なリソースの利用によってコストを削減します。
- ロードバランシング: コンテナ化アプリケーションの負荷を迅速に別のサーバーに移し、インフラストラクチャ全体に均等に分散させることでアプリケーションパフォーマンスを向上させます。
- ヘルス監視: コンテナ化アプリケーションのステータスが監視されており、ユーザーに影響が及ぶ前に問題を検知して解決できます。ヘルスチェックとLiveness Probeを実施してコンテナの稼働状態を評価します。
- バージョン管理: コンテナ化アプリケーションのバージョンを記録してコンテナオーケストレーションを管理し、アプリケーションコードと構成ファイルを明示します。
クラウド アジリティにおける柔軟性と拡張性
柔軟性と拡張性により、組織が需要の変化に効率的に対応してクラウド環境のリソース使用率を最適化することにより、クラウドコンピューティングのアジリティが向上します。
- クラウドにおける柔軟性と拡張性: 柔軟性と拡張性により、企業はリソースを管理しながら、需要の変化に柔軟に対応して最適なパフォーマンスを確保できます。柔軟性とは、ワークロードの変化に応じてコンピューティングリソースを自動的に拡張することです。企業は、需要の変化に合わせてリソースを追加または削除できます。拡張性とは、新たなリソースを追加 (垂直または水平スケーリング) して、ワークロードの増大に対応できるようにすることです。
- クラウドのリソースを動的に拡張する方法: 水平スケーリングでは、リソース、またはコンテナのインスタンス数を増やすことで負荷を分散させます。新しいリソースが追加されるため、アプリケーションは停止することなく効率的に稼働し続けます。リソースのプロビジョニングが完了すると、アプリケーションが追加リソースに展開されます。垂直スケーリングとは、CPUや仮想マシンのメモリなどの個別のリソースの容量を拡張することです。新しいリソースの追加は含まれず、代わりに既存リソースの能力が最適化されます。
- 自動スケーリングとロードバランシングによるクラウドのアジリティ向上: 自動スケーリングでは、設定された評価基準やポリシーに基づいてリソース容量を自動的に拡張することで、最適なパフォーマンスとコスト効率を実現します。ロードバランシングでは、入ってくるトラフィックを複数のリソースに分散させることでボトルネックを最小化し、システムパフォーマンス全体を向上させます。
自動化とオーケストレーション
自動化とオーケストレーションはクラウドコンピューティングの基本概念であり、クラウドコンピューティング環境でのアジリティ向上に役立ちます。自動化では、テクノロジーや手法を利用してジョブを自動化します。オーケストレーションでは、所定の成果を達成するために、さまざまな運用自動化を調整して管理します。
クラウド アジリティにおける自動化とオーケストレーションの重要性
自動化とオーケストレーションは、アジャイルなクラウドコンピューティングを実現して維持するために必要となります。主なメリットは次のとおりです。
- 効率とスピード: オーケストレーションと自動化によって手動の作業が減り、クラウドリソースの迅速な展開、拡張、管理が可能になります。
- 拡張性と柔軟性: 自動化とオーケストレーションにより、動的な拡張とリソース割り当てが可能になり、組織がさまざまなワークロードのバランスを調整できます。
- 整合性と標準化: 自動化とオーケストレーションにより、クラウド環境が一律に構成、展開、管理されるようになり、信頼性が向上してエラーが減少します。
- コスト最適化: 自動化とオーケストレーションにより、リソース使用率を最適化してコストを管理しつつガバナンスポリシーを適用でき、クラウドリソースの効率的な割り当てが可能になります。
- アジリティと適応性: クラウドベースのアプリケーションとサービスを迅速にプロビジョニング、展開、変更できます。
- リスクの軽減: 自動化とオーケストレーションにより、反復作業を自動化してセキュリティ対策を適用し、標準化された手法を維持することで、クラウドのリスクが軽減されます。
クラウド アジリティのガバナンスと管理
ガバナンスと管理では、クラウドのリソースと運用を効果的に管理および監視するためのプロセス、フレームワーク、ツールを提供します。
ガバナンスフレームワークによるクラウドコンピューティングのアジリティ確保
- クラウドガバナンスポリシー: クラウドの導入と利用に関して明確なポリシーを規定し、クラウドリソースの効率的かつ安全な利用を実現します。
- Cloud Center of Excellence (CCoE): 一元的なチームが全社のクラウドガバナンスとベストプラクティスに対応します。
- クラウドサービス管理: クラウドサービスにサービス管理フレームワークを導入することで、クラウドリソースのライフサイクル管理をサポートします。
- コスト管理: クラウド アジリティの実現には、優れたコスト管理が不可欠です。
クラウドリソースの監視と最適化によるアジリティの向上
リソースを監視および最適化して、アジャイルなクラウドコンピューティング、パフォーマンス、コスト効率を実現する必要があります。その方法は次のとおりです。
- パフォーマンス監視: パフォーマンス監視では、クラウドリソースのパフォーマンスと稼働状態を継続的に監視します。
- リソースチェック: リソース使用状況の監視は、低使用率または過負荷のリソース検知に役立ちます。
- コスト最適化: 支出の多い領域を特定してリソース使用率を最適化し、無駄な支出を削減する措置を講じる必要があります。
- パフォーマンス最適化: アプリケーションとインフラストラクチャのパフォーマンス測定結果を確認して、改善すべき領域を見極めます。
HPEとクラウド アジリティ
クラウド アジリティとは、期待されるクラウドコンピューティングの品質です。変更に対処して俊敏性を維持し、クラウドベースの多様なリソースを活用しながら、企業組織のコンピュート運用を可能な限り柔軟に行うために最適化された能力のことです。HPE GreenLakeが必要とされるクラウド アジリティを必要な場所で提供するため、お客様はデータ環境の変革をスムーズに推進できます。従量制課金プラットフォームで利用できるHPE GreenLakeは、クラウドのニーズに応じた規模でリソースを提供します。
これらの点を踏まえ、HPEは、従来型のITからクラウドベースのサービスへの移行を成功させるには、テクノロジー以外の要素も考慮する必要があると考えています。通常、トランスフォーメーションの取り組みが成功するか失敗するかは、どのテクノロジーを選択したかではなく、戦略やスキル、文化に関して抱える問題によって決まります。HPEのEdge-to-Cloud導入フレームワークは、組織の変革がどの段階まで進んでいるかを把握し、次にとるべきステップの優先順位を見極めるうえで役立つシステムと共通言語を提供します。
変革が軌道に乗れば、HPEハイブリッドクラウドソリューションが組織にとって必要なスピード、アジリティ、コスト削減を実現します。またHPEは、データグラビティ、セキュリティ、コンプライアンスと規制、コスト管理、組織的変更の必要性といった困難な問題に取り組むお客様に有益な情報とサポートを提供しています。HPEのハイブリッドクラウドソリューションは、人員、プロセス、テクノロジーの変革で実績のある手法により、クラウドの複雑さの解消とデジタルトランスフォーメーションの加速化をサポートします。