クラウド移行
クラウド移行とは
クラウド移行とは、企業または組織がデータセンターの機能の一部または全部を従来のオンプレミス環境からクラウドベースのインフラストラクチャへと再配置するプロセスのことです。
企業がクラウド移行に備えるには
クラウド移行とは、組織のITインフラストラクチャ、アプリケーション、および情報資産を、従来のレガシーシステムやオンプレミスシステムからクラウドインフラストラクチャに移行することをいいます。このプロセスでは、入念な分析を行ったうえで以下の手順を実行する必要があります。
- 現在のインフラストラクチャおよびアプリケーションの評価: ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションなど、既存のあらゆるインベントリおよびリソースについて詳細に分析し、移行の必要性や互換性を確認します。
- クラウド移行の目標および目的の明確化: コスト削減、パフォーマンスの向上、運用コストの最小化など、移行の目標と目的を明確にします。
- セキュリティ要件とコンプライアンス要件の分析: セキュリティおよびコンプライアンス規格を確認し、クラウド環境がその要件を満たしていることを確認します。
- コストおよび投資収益率 (ROI) の見積もり: 初期費用とメンテナンスコストの評価、ROIの算定、投資額の検証など、移行の経済的側面を評価します。
- 移行戦略およびロードマップの策定: 移行の順序、スケジュール、必要なリソースを含む、詳細な計画を策定します。
企業はこうした手順に従うことで、クラウド移行の計画を策定して準備し、リスクを最小限に抑えつつクラウド環境への移行を成功させることができます。
企業がクラウドに移行する理由
- データ分析の活用:
企業は、データ分析を最大限に活用するためにクラウドへの移行を進めており、スケーラブルかつ低コストのクラウドサービス上に膨大なデータを保存しています。クラウドベースの分析ツールや分析サービスを利用してデータを処理および分析することで、的確な意思決定、運用効率の向上、ビジネスインテリジェンスの強化につなげることができます。
- アジリティの向上:
クラウド移行によってビジネスのアジリティが向上します。クラウドインフラストラクチャでは、企業がニーズに応じてコンピューティングリソースを拡張できます。こうした柔軟性によってアプリケーションの開発と展開に必要な時間を短縮し、市場に適応しつつ、オンプレミスインフラストラクチャを使用することなくテクノロジーを実験することが可能になります。
- データの統合と最新化:
クラウド移行により、企業は既存のデータインフラストラクチャをアップグレードおよび統合することができます。クラウドにおけるデータの保管と管理を一元化することで、サイロを解消して冗長性を排除し、データのエコシステムを簡素化できます。こうした統合により、データアクセス、コラボレーション、現在のデータ主導の取り組みが簡素化されます。
クラウド移行のメリット
- IT運用コストの削減:
クラウド移行は、IT運用コストの削減というメリットをもたらします。より低コストの従量制課金モデルに移行することで、サーバーやストレージなどのオンプレミス機器を購入する必要がなくなります。それによってメンテナンスコストが削減され、設備投資が減り、予算管理全体が改善され、リソースをより有効に活用できます。
- より効率的なハードウェアの割り当て:
クラウド移行では、仮想化とリソースプールにより、ハードウェアの割り当てをより効果的に行えるようになります。組織はコンピューティングリソースを最適化することで、サーバーとストレージがニーズに合わせて動的に割り当てられる状態を維持できます。こうした柔軟性により、ITインフラストラクチャのコスト効率と柔軟性を高めつつ、オーバープロビジョニングを削減して全体のリソース稼働率を改善できます。
- 迅速なソフトウェアイノベーション:
クラウドインフラストラクチャは、迅速なソフトウェアイノベーションに最適な環境を提供します。開発ライフサイクルは、開発チームがクラウドネイティブなツールとサービスを利用することで効率化できます。クラウドの迅速なアプリケーション展開、テスト、およびイテレーション機能により、継続的なイノベーションの文化が向上します。企業は、アジリティの向上により、市場の変化や顧客からのフィードバック、技術開発に迅速に対応することが可能になります。
- 柔軟な拡張性:
クラウド移行によって得られる柔軟な拡張性により、企業は、ニーズに応じてリソース量を調整できます。こうした柔軟性により、企業は、インフラストラクチャへの大規模な初期投資を行うことなく、さまざまなワークロードに対応できます。柔軟な拡張性は、最大消費量や低活動期間にかかわらず、柔軟かつ低コストのソリューションをもたらします。
- セキュリティの強化:
クラウドプロバイダーは、個々の企業で対応できる範囲を超えて、セキュリティ対策を大幅に強化することができます。クラウド移行では、クラウドサービスの高度な暗号化、アイデンティティ管理、コンプライアンス機能により、セキュリティ全般を強化できます。機密データはこうした共同セキュリティの枠組みによって保護されており、企業はクラウドセキュリティ専門チームの経験を活用できます。
クラウド移行プロセスとは
1. クラウド移行の準備: クラウド移行とは、組織のITインフラストラクチャ、アプリケーション、および情報資産を、従来のレガシーシステムやオンプレミスシステムからクラウドインフラストラクチャに移行することをいいます。このプロセスでは、入念な分析を行ったうえで以下の手順を実行する必要があります。
- 包括的なクラウド移行準備状況評価: インフラストラクチャとアプリケーションの評価は、インベントリ分析だけにとどまりません。特に、入念なアプリケーション検出によって隠れた依存関係と複雑なアプリケーションのやり取りを確認します。この手法により、テスト状態のアプリケーションが本番システムに統合されており厳密な分離が必要、といった問題を特定できます。クラウド移行の互換性を確保するため、ハードウェア、ソフトウェア、およびアプリケーションが評価の対象となります。この広範囲にわたる評価は、クラウド移行の問題に対応する、より高度な移行アプローチの基盤となります。
- クラウド移行の目標および目的の明確化: コスト削減、パフォーマンスの向上、運用コストの最小化など、クラウド移行の目標と目的を明確にします。
- セキュリティ要件とコンプライアンス要件の分析: セキュリティおよびコンプライアンス規格を確認し、クラウド環境がその要件を満たしていることを確認します。
- コストおよび投資収益率 (ROI) の見積もり: 初期費用とメンテナンスコストの評価、ROIの算定、投資額の検証など、移行の経済的側面を評価します。
- 移行戦略およびロードマップの策定: 移行の順序、スケジュール、必要なリソースを含む、詳細な計画を策定します。
企業はこうした手順に従うことで、クラウド移行の計画を策定して準備し、リスクを最小限に抑えつつクラウド環境への移行を成功させることができます。
2. 移行のプランニングと実施: 移行のプランニングと実施には、スムーズな移行を実現するための以下の作業が含まれます。
- アプリケーションの評価と優先順位付け: 現在のアプリケーションを支援し、その重要度、複雑さ、統合、カスタマイズ、依存関係、ビジネス価値などの要素に応じて分類します。それにより、移行手順に留意しながら、抜け穴となるものを特定できます。
- データ移行戦略: 次のステップは、クラウドアプローチにおける適切なデータ移行の見極め (データレプリケーションや段階的な移行など) です。また、データの完全性を確保できるデータ移行および同期計画の策定も必要となります。2つの重要なパラメーター (データの量と機密度) に着目する必要があります。転送速度、帯域幅、ダウンタイムの要素に応じて移行する必要があるデータの大きさを確認します。また、明示的に処理しなければならない機密データを特定し、各種規制や規格へのコンプライアンスを維持します。
- 依存関係と相互依存の管理: データベース、インフラストラクチャ要素、アプリケーション、および外部システムの間の依存関係を識別して管理します。異なる領域間の関係をマッピングしてボトルネックを未然に防ぐことも重要です。移行プロセスが、応答時間とシステム可用性に関するSLAに従って行われていることを確認します。
- 移行済みアプリケーションのテストと検証: 徹底的なテスト (機能とパフォーマンスの両面) を実施し、移行済みのクラウド環境の効率的な動作、パフォーマンス、互換性を検証します。
- 展開とロールオーバーのプランニング: アプリケーションを本番環境に移行する計画を立て、スケジュールを設定します。関係者と連携してダウンタイムを削減し、障害を回避します。さまざまな問題に迅速かつ効果的に対応するには、明確に定義されたロールバック手法とコンティンジェンシープランが必要となります。こうしたプロアクティブな戦略により、リスクを軽減してシームレスな再配置を実現できます。
- 変更管理とユーザートレーニング: 新たに移行されるアプリケーションの効率的な導入のため、関係者やユーザーにトレーニングとサポートを提供します。
3. セキュリティとコンプライアンスの確保: 強力なセキュリティ手法を導入することで、データの機密性と完全性を維持しつつ、コンプライアンス規格に準拠します。
- クラウドにおけるセキュリティリスクの評価: 潜在的脆弱性やデータ漏洩リスクなど、あらゆるセキュリティの脅威について広範囲にわたる分析を行います。企業は、ネットワークベースの攻撃や不正ログインからクラウド環境を保護する必要があります。侵入検知システムと侵入防止システムの導入が有用であることがわかっています。
- 適切なセキュリティ対策の導入: 侵入検知システムと侵入防止システムの導入が、リスクの軽減に有効です。企業は、ファイアウォールとネットワークセグメンテーションを活用し、インシデント対応を導入することで、攻撃へのタイムリーな追跡と対応を実現できます。
- コンプライアンス要件への対応: 法的義務に対応し、クラウド移行が業界固有のコンプライアンス規格に準拠していることを確認します。
- クラウドにおけるセキュリティの監視と管理: プロセスを定期的に監視および管理し、セキュリティの抜け穴を特定します。その他の重要な機能として、SIEM (Security Information and Event Management)や脆弱性を追跡してセキュリティプロセスの効率を確認するインシデント対応などがあります。
4. パフォーマンスとコスト効率の最適化: 企業がクラウド移行のメリットを最大限に得るには、コストを最適化してパフォーマンスを向上させる戦略に重点を置いて実行する必要があります。
- クラウドにおけるリソースの拡張: ニーズに応じたリソースの調整をサポートします。たとえば、ワークロードのパターンや所定のしきい値に応じてリソースのプロビジョニングを設定または解除できます。また、ワークロードニーズの増大に対応するために、リソースインスタンスを垂直および水平に追加することも可能です。
- パフォーマンスの監視と最適化: ツールを使用してパフォーマンスを追跡し、抜け穴となるものやその最適化手法を特定し、コードのデータベースクエリを強化してパフォーマンスを向上させます。
- コスト最適化戦略とベストプラクティス: リソース規模の適正化により、利用可能なリソースの使い過ぎや低使用率を防止し、コストを最適化します。
- ガバナンスツールとコスト管理ツールの導入: ガバナンスツールとコスト管理ツールの活用により、リソースとコストの一元的な把握と管理が可能になり、透明性を確保できます。たとえば、タグ付けと分類により、特別なリソースやプロジェクトのコストを規定します。
5. 移行後の作業の管理: 継続的な移行後の作業がサポートされるので、企業はクラウド環境の最適なパフォーマンスと耐障害性を維持できます。
- 監視とトラブルシューティング: 応答時間とレイテンシの測定、エラーと例外の特定、リソース使用率の監視により、移行済み資産の正常な稼働状態を維持します。
- 継続的な改善と最適化: 移行済みのアプリケーションおよびデータのパフォーマンスを向上させるには、継続的改善の手法を取り入れる必要があります。
- ディザスタリカバリおよびバックアップ戦略: RTO (復旧時間目標)、RPO (復旧ポイント目標)、バックアップ成功率、定期的なテストと検証が含まれます。
- ベンダー関係とSLAの管理: クラウドベンダーとの関係を強化し、SLAに対応して、合意済みのサービスレベルを遵守します。
クラウド移行戦略の7R
- リファクタリング/再設計: リファクタリングは、Platform as a Service (PaaS) モデルでパフォーマンスを向上させるためにクラウドベースアプリケーションを最適化するときに行われます。アプリケーション自体は組織の外でも基本的に同じであるため、利用可能なクラウドベースのツール、セキュリティ、または企業規格をより有効に活用できます。リアーキテクトには、アプリケーションのコーディングを包括的に見直す作業が含まれます (ただし、やや混同して使用されています)。
- プラットフォーム変更 (リフトアンドリシェイプ): 同じように、プラットフォーム変更または再構築では、よりクラウドに準拠したオペレーティングシステムに移行します。移行後にアプリケーションの機能が変わることがあり、スタッフの再トレーニングが必要となる場合があります。
- 再購入 (ドロップアンドショップ): 再購入により、古くなったアプリケーションをクラウドベースの新しいアプリケーションに置き換えます。この方法では、企業が自社のニーズに合わせてカスタマイズされたクラウドネイティブアプリケーションを選択します。シンプルかつ効率的な手法であり、システムを大きく変更したり、ゼロから設計したりすることなく、即座にクラウドのメリットが得られます。
- 再ホスティング (リフトアンドシフト): 最も一般的なクラウド移行の手法であり、ITプロフェッショナルからは一般に再ホスティング (口語では「リフトアンドシフト」) と呼ばれています。リフトアンドシフトは通常、従業員にも気付かれないまま実行されます。アプリケーションとデータを物理環境からクラウド (複数の拠点で提供可能) に移行することなどが含まれます。
- 再配置 (ハイパーバイザーレベルのリフトアンドシフト): クラウド移行の最後のタイプは、一方のクラウドサーバーから別のクラウドサーバーへの再配置です。さまざまな理由で組織が別のプロバイダーに移行する必要がある、リホストのもう1つのタイプです。たとえば、クラウドを再配置する理由として、コスト、必要な容量の増加、サービス品質などが挙げられます。
- 保持 (再検討): 保持とは、現在のプログラムを維持しながら、クラウドへの移行に向けた見直しと精緻化を進めることを指します。リホストと関連付けられることの多いこの方法では、よりシームレスな転送が保証される一方で、使い慣れたユーザーエクスペリエンスが保持されます。プログラムの再検討とは、障害を最小限に抑えつつ、クラウドの機能を活用してパフォーマンスを向上させ、互換性の問題を解消することをいいます。
- 廃棄: 廃棄とは、クラウドへの移行を進める中で特定のアプリケーションを段階的に廃止または廃棄するプロセスを指します。この手法には、クラウド環境では不要になった未使用のアプリケーションや古いアプリケーションの特定と削除が含まれます。アプリケーションの廃止では、IT環境から不要なコンポーネントを削除することでプロセスを簡素化し、支出を削減し、全体の有効性を向上させます。
クラウド移行に伴う課題
- 互換性のないクラウドインフラストラクチャ:
クラウドインフラストラクチャに互換性がないと、クラウド移行が複雑になります。アプリケーションやデータを互換性のないクラウド環境に移行すると、統合の問題が発生し、サービス継続性に影響する可能性があります。
- 依存アプリケーションの移行:
相互に依存しているアプリケーションの移行も複雑になります。相互に接続されたアプリケーションの移行時にシステムの完全性を維持するには、慎重なプランニングと実施が必要となります。
- アプリケーションのリファクタリングのコスト:
クラウドネイティブの要件に合わせてアプリケーションをリファクタリングすると、コストがかかります。クラウド向けにコードを最適化するには多くのリソースが必要となる場合があり、移行のスケジュールとコストに影響を及ぼします。
- 戦略的プランニングの欠如:
戦略的な準備が不足していると、クラウド移行がスムーズに完了できない場合があります。戦略を立てていない企業は、遅延、想定外の課題、コスト増加などのリスクを負います。スムーズに移行し、クラウド導入のメリットを最大限に得るには、詳細な移行計画が必要となります。
- 戦略の欠如:
プランニングと再配置戦略は不可欠です。明確な計画を立てなければ、企業目標の誤認や不整合、不十分なリソース割り当てにより、移行が成功しない可能性があります。
- ベンダーロックイン:
ベンダーロックインは、クラウドサービスプロバイダーを切り替える際に柔軟な選択の妨げとなり、コスト増につながることがあります。ベンダー依存を回避するには、互換性とポータビリティに留意する必要があります。
- データセキュリティとコンプライアンス:
データセキュリティとコンプライアンスは、クラウド移行時の最優先事項です。信頼確保と法令遵守には、機密データを保護し、クラウドプロバイダーが業界の法令に従うことが必須です。
- スタッフのスキルギャップ:
クラウド移行には新たなスキルが必要となります。クラウド環境の複雑さに対処するには、クラウドアーキテクチャー、セキュリティ、管理の中で従業員をトレーニングする必要があります。トレーニングと教育は、最新のテクノロジーへの対応に不可欠です。
クラウド移行時にセキュリティとコンプライアンスを維持する方法
強力なセキュリティ手法を導入することで、データの機密性と完全性を維持しつつ、コンプライアンス規格に準拠します。
- クラウドにおけるセキュリティリスクの評価: 潜在的脆弱性やデータ漏洩リスクなど、あらゆるセキュリティの脅威について広範囲にわたる分析を行います。企業は、ネットワークベースの攻撃や不正ログインからクラウド環境を保護する必要があります。侵入検知システムと侵入防止システムの導入が有用であることがわかっています。
- 適切なセキュリティ対策の導入: 侵入検知システムと侵入防止システムの導入が、リスクの軽減に有効です。企業は、ファイアウォールとネットワークセグメンテーションを活用し、インシデント対応を導入することで、攻撃へのタイムリーな追跡と対応を実現できます。
- コンプライアンス要件への対応: 法的義務に対応し、クラウド移行が業界固有のコンプライアンス規格に準拠していることを確認します。
- クラウドにおけるセキュリティの監視と管理: プロセスを定期的に監視および管理し、セキュリティの抜け穴を特定します。その他の重要な機能として、SIEM (Security Information and Event Management)、脆弱性を追跡してセキュリティプロセスの効率を確認するインシデント対応などがあります。
クラウド移行においてパフォーマンスとコスト効率を最適化する方法
企業がクラウド移行のメリットを最大限に得るには、コストを最適化してパフォーマンスを向上させる戦略に重点を置いて実行する必要があります。
- クラウドにおけるリソースの拡張: ニーズに応じたリソースの調整をサポートします。たとえば、ワークロードのパターンや所定のしきい値に応じてリソースのプロビジョニングを設定または解除できます。また、ワークロードニーズの増大に対応するために、リソースインスタンスを垂直および水平に追加することも可能です。
- パフォーマンスの監視と最適化: ツールを使用してパフォーマンスを追跡し、抜け穴となるものやその最適化手法を特定し、コードのデータベースクエリを強化してパフォーマンスを向上させます。
- コスト最適化戦略とベストプラクティス: リソース規模の適正化により、利用可能なリソースの使い過ぎや低使用率を防止し、コストを最適化します。
- ガバナンスツールとコスト管理ツールの導入: ガバナンスツールとコスト管理ツールの活用により、リソースとコストの一元的な把握と管理が可能になり、透明性を確保できます。たとえば、タグ付けと分類により、特別なリソースやプロジェクトのコストを規定します。
クラウドの移行後の作業を管理する方法
継続的な移行後の作業がサポートされるので、企業はクラウド環境の最適なパフォーマンスと耐障害性を維持できます。
- 監視とトラブルシューティング: 応答時間とレイテンシの測定、エラーと例外の特定、リソース使用率の監視により、移行済み資産の正常な稼働状態を維持します。
- 継続的な改善と最適化: 移行済みのアプリケーションおよびデータのパフォーマンスを向上させるには、継続的改善の手法を取り入れる必要があります。
- ディザスタリカバリおよびバックアップ戦略: RTO (復旧時間目標)、RPO (復旧ポイント目標)、バックアップ成功率、定期的なテストと検証が含まれます。
ベンダー関係とSLAの管理: クラウドベンダーとの関係を強化し、SLAに対応して、合意済みのサービスレベルを遵守します。
クラウド移行の主要タイプ
クラウド移行には、主に3つの戦略および手法タイプがあります。
- データセンターの全面移行:
オンプレミスデータセンターをクラウドに移行する包括的なプロセスは、データセンターの全面移行と呼ばれます。サーバー、ストレージ、およびネットワークインフラストラクチャをクラウドベースの同等インフラストラクチャに再配置することが包括的戦略に含まれています。「リフトアンドシフト」などのリホスト手法が含まれることが多く、すべてのデータセンター運用のクラウドへのスムーズな移行を実現し、ダウンタイムを削減してクラウドの拡張性メリットを活用します。
- ビジネスプロセスソフトウェアサポートの移行:
このようなクラウド移行の主な目的は、重要なビジネスプロセスアプリケーションおよびソフトウェアをクラウドに再配置することにあります。データセンター全体を移行するのではなく、重要な業務に必要となる特定のソフトウェアを特定して移行することに重点が置かれます。この方法なら、企業が選択したクラウドのメリットを活用してリソースを最適化し、運用上重要なアプリケーションの移行プロセスを迅速化できます。
- Web/モバイルアプリケーションの最適化:
「Web/モバイルアプリケーションの最適化」により、クラウド環境におけるアプリケーションの拡張性とパフォーマンスが向上します。リアーキテクトやリファクタリングと関連付けられることの多いこの戦略には、Platform as a service (PaaS) などのクラウドネイティブ機能を使用するためのプログラム最適化が含まれます。それにより、アプリケーションがクラウドに移行されるだけでなく、最適なパフォーマンス、セキュリティ、使いやすさが得られるように最適化されます。
クラウド移行のタイプ
クラウド移行環境には、組織の目標に応じてさまざまなバリエーションがあります。
- オンプレミスデータセンターの全面移行:
サーバー、ストレージ、ネットワークなどのコンポーネントを含むオンプレミスデータセンター全体をクラウドに移行することです。この包括的な戦略は「リフトアンドシフト」とも呼ばれており、既存のオンプレミス インフラストラクチャをクラウドにスムーズに移行することを目標とします。
- クラウド間の移行:
組織は、クラウドサービスプロバイダーの切り替えを選択できます。その要因として、コスト、サービス、商業上のニーズが挙げられます。互換性とサービスの継続性を維持しつつ、アプリケーション、データ、およびその他のリソースが元のクラウドプロバイダーから移行先のクラウドプロバイダーへと移行されます。
- 特定のアプリケーションまたはデータセットの移行:
一部の組織はターゲットを絞った手法を選択し、特定のアプリケーションまたはデータセットをクラウドに移行します。この方法では、重要なITインフラストラクチャのコンポーネントに重点を置きつつ、移行を効率化して管理することが可能です。これには、クラウド環境とのアプリケーション互換性テストが含まれます。
- 特定のワークロードの移行:
この移行には、個別のワークロードまたはコンピューティングプロセスをクラウドに移行するプロセスが含まれます。企業は、クラウドの拡張性とパフォーマンスのメリットが得られる運用、サービス、プロセスを特定します。ワークロード移行には、企業のプロセス、データベース、またはアプリケーションをクラウドに移行し、それ以外をオンプレミスで保持するプロセスが含まれます。
クラウド移行の展開モデル
- パブリッククラウド: サードパーティのサプライヤーがインターネットで提供している共有コンピューターリソースを使用します。柔軟でアクセスしやすいコンピューティングを求める企業に必要とされる拡張性、コスト効率、アクセシビリティを提供します。
- プライベートクラウド: 単一企業向けのプライベートクラウドインフラストラクチャを使用します。セキュリティの強化、制御性の向上、高度なカスタマイズにより、厳格な法的要件やプライバシーの懸念がある業界をサポートします。
- ハイブリッドクラウド: パブリッククラウド環境とプライベートクラウド環境を統合し、企業が両方のメリットを得られるようにします。オンプレミス環境とクラウド環境の間でデータとアプリケーションをワークロードベースで移行できます。
- マルチクラウド: さまざまなクラウドプロバイダーが提供するサービスを同時に利用できます。それによって企業の冗長性が向上してベンダーロックインが解消され、固有のビジネスニーズに合わせてさまざまなサプライヤーから最も優れたサービスを選択することが可能になります。
- Infrastructure as a Service (IaaS): このアプローチの場合、組織はサーバーやストレージなどの仮想化コンピューティングリソースをインターネット経由で借りることができます。拡張性と柔軟性に優れており、企業はハードウェアを維持することなく、アプリケーションの開発に注力できます。
- Platform as a Service (PaaS): PaaSの場合、開発者はインフラストラクチャを管理することなくアプリケーションを設計、展開、管理できます。開発の合理化によって効率が向上し、アプリケーションの市場投入までの時間が短縮されます。
- Software as a Service (SaaS): SaaSでは、ソフトウェアプログラムがオンラインで提供され、ローカルでのインストール、管理、メンテナンスが不要になります。さまざまな商用アプリケーションが、アクセスしやすさ、アップグレードの自動化、コスト削減といったメリットを得ることができます。
クラウド移行のユースケース
組織のデータ活用に貢献するクラウド導入事例が数百件もあるなかで、最も一般的なクラウド移行のユースケースは以下のとおりです。
Webホスティング
組織は、クラウドのInfrastructure as a service (IaaS) 機能を利用してサーバーの負荷を分散させます。トラフィックが突然または大幅に増加すると、クラウド管理ツールが迅速に対応して機能をプロビジョニング/拡張するため、ユーザーは長いロード時間に悩まされることがなくなります。
ビッグデータ
小売企業やソーシャルメディア企業は、ユーザーの行動に関する貴重な情報を大量に収集、保存、収益化しています。また多くの企業は、製品開発やマーケティングなどのあらゆる業務で十分な情報に基づいた意思決定をサポートするために、独自データの収集を始めています。HPEのIaaSベースのクラウドサービスを利用してこうした情報を追加、管理、分析することで、業界における競争力を強化することができます。
ディザスタリカバリ
実質的に無制限のデータストレージにより、組織は完全なデータバックアップを自動的に作成して保存することができます。不測の事態が発生した場合は、このPaaS機能により、必要なデータにポイントアンドクリックで簡単にアクセスしてバックアップを取得し、迅速に復旧することができます。
ソフトウェア開発
クラウドが登場するまで、ソフトウェアの構築、テスト、展開には何年もかかっていました。柔軟なクラウドベースのPaaSソリューションでは、開発チームが相乗効果の高い方法でワークフローと生産性を向上させることができます。統合プロセス自動化、デバッグ、コードベースのコンパイル、プロジェクト管理などの機能により、クラウドにおけるソフトウェア開発はこれまで以上に堅牢化されています。
HPEとクラウド移行
プランニングから実行に至るまで、HPEはクラウド移行に関する高度な知見と専任のコンサルタントスタッフを有しており、お客様のクラウド移行を成功に導くことができます。1000件以上のクラウド移行実績を持つHPEが、お客様固有の課題に合わせて最適な組み合わせのクラウドを提供するとともに、不足する可能性のあるテクノロジーやスキルを特定します。
HPE Transformation Programでは、お客様の人員、プロセス、テクノロジーを客観的に分析し、クラウドビジネスオフィス (CBO) の設置をサポートします。また、現在のITインフラストラクチャ、およびクラウドに移行した場合のコストについて財務分析を行うことも可能です。
HPEのエキスパートが、アプリケーション移行計画の策定や評価をサポートし、クラウド移行に最も適したアプリケーションの見極めを支援します。またHPEは、クラウドネイティブソフトウェア開発サービスも提供しており、さまざまなチームが連携してアプリケーションの開発と展開を最適化できるようにサポートします。
最後に、HPEはDevOpsのトレーニングと認定資格に加えて成熟度評価を提供しており、チームが共通のビジョンとその達成方法を共有するうえで役立ちます。組織によって必要なサポートは異なりますが、HPEは、お客様のクラウド移行を確実に成功に導くことを目指しています。