モバイルエッジコンピューティング

モバイルエッジコンピューティングとは

モバイルエッジコンピューティング (MEC) とは、おそらく今日ではマルチアクセスエッジコンピューティングという名称の方が広く知られるようになりましたが、データがキャプチャーされる場所に一番近いエッジデイバスやアプリケーションによって生成された大量のデータをほぼリアルタイムで処理すること、つまりエッジネットワークインフラストラクチャのエッジを拡張することを指します。

モバイルエッジコンピューティングの使用方法

エッジコンピューティングと同様、MECによりクラウド上のデータが生成、収集、分析される場所の間の距離が縮まります。一般的にデータセンターに任せられる処理は現在、仮想的に行われており、クラウドネットワーク内のワイヤレスデバイスの近くでモバイルエッジクラウドが情報を収集、保存、処理しています。デバイスの近くで拡張機能を使用すれば、帯域幅が増加したり、レイテンシが低減されたり、応答時間が短縮されたり、意思決定が迅速化されたりなど、パフォーマンスが大幅に向上します。

関連するHPEのソリューション、製品、サービス

マルチアクセスコンピューティングとモバイルエッジコンピューティングの違い

大まかに言うと、これらの用語は概念的に同じ意味で使われることが少なくありませんが、モバイルテクノロジーの開発が進む中で、研究者と技術者はその定義を再考して拡大せざるを得ませんでした。

当初広範なセルラーネットワークの接続とパフォーマンスを念頭に置いたデリバリシステムとして構想されたMECは、モバイルネットワークに重点を置いていましたが、研究者はすぐに、携帯電話だけがレイテンシの低い高帯域幅のパフォーマンスのメリットを得られるエッジデバイスではないことに気付きました。実際、接続デバイスの急増に伴ってその定義はさらに広がり、スマートテクノロジーやスマート製造などのその他の接続ポイントも含められるようになりました。

そのため2017年の後半に、欧州電気通信標準化機構 (ETSI) のIndustry Specification Groupが電気通信の枠を超えてエッジコンピューティングとモノのインターネット (IoT) のあらゆる可能性を包含するために、その用語を「マルチアクセスコンピューティング」に変更しました。

モバイルエッジコンピューティングが重要な理由

あらゆるものがつながり合うようになりつつある世界では、エッジでデータが生成、収集、分析されるプロセス (特にデバイスとクラウドの間で情報がやり取りされるプロセス) の中で、新たなテクノロジー、サービス、エクスペリエンスが急速に生み出されており、MECは、コンシューマーと企業の両方が利用できる、さまざまなコンテキストや業界にわたる汎用的なツールとなっています。

セキュリティと監視: ほぼ絶え間なく使用されているデジタルカメラは、大量のデータを生成しますが、カメラネットワークにMECを組み込めば、多くのソースから得たデータをファシリティに保存して素早く処理できます。高帯域幅が高画質をサポートし、信頼性の高いコンピューティング性能によって (中央のデータセンターではなく) オンサイトで素早くデータを分析することが可能です。たとえば、民間の倉庫設備のセキュリティカメラは、顔認識を活用して被害が生じる前に潜在的な脅威を特定できます。また交通監視カメラは、コントロールセンターにリダイレクトするのではなく、リモートで交通状況に適応させることが可能です。

拡張現実、バーチャルリアリティ、ゲーミング: MECにより、建築、建設、エンジニアリグなど、さまざまな業界のリモートワーカーは、ヘッドセットなどのデバイスで複雑な3Dレンダリングを現場に展開して使用することが可能です。通常、非分散型のデータセンターからアクセスした場合、このようなデータ集約型のレンダリングは、レイテンシが大きくなりすぎて使いものになりませんが、MECを活用することにより、チームは特定のワークフローに3D設計を組み込んでコラボレーションを強化できます。

また、ゲーミングアプリケーションも同じように動作します。(VRヘッドセット、モバイルゲーム、ストリーミングサービスなどの) クラウドベースのゲーミングとそれに関連するハードウェアが増加したことにより、ビデオゲームは従来のコンソール中心からローカルのハードウェアやソフトウェアへと移行しました。今日のゲーマーは、今まで以上に必要最低限の処理しか行わないクライアントでほとんど、またはまったくレイテンシを伴うことなく、大量のデータを使用して没入型のエクスペリエンスを提供するものをはじめとした、お気に入りのゲームにアクセスできます。

自動運転車と自律型ロボット: 自動運転車や自律走行型搬送ロボット (AMR) のような新興テクノロジーには、迅速に判断を下すための堅牢な機械学習が必要です。このような判断が遠くのデータセンターで下された場合、潜在的な衝突や障害を回避して問題をエスカレーションするまでの時間に数秒の違いが生じる可能性がありますが、物理的に近い場所でリアルタイムに判断を下す自動車なら、進路内の人、動物、車両を識別して避けることができます。また同じように、AMRは環境の障害や従業員の作業の中断などにかかわらずタスクを完了し、ダウンタイムの最小化と生産性の維持に貢献します。

現在進行中の5Gネットワークの展開: 次世代のグローバルなワイヤレス標準である5Gと5Gに由来するイノベーションは、MECを利用してあらゆる場所のマシン、オブジェクト、デバイス、人をつなぎます。広範な5Gネットワークの主なセールスポイントの1つは、高帯域幅の超高信頼性低遅延通信 (URLLC) にありますが、これによってMECは、切り離すことができないと言っても過言ではないコミュニケーションの重要な要素となっています。5Gの用途はMEC自体と同じように多様であり、ビデオゲームやエンターテインメントなどのコンシューマー向けのテクノロジーだけでなく、教育、農業、物流輸送、医療など、一瞬のアクションが成否や生死さえも左右する領域でのミッションクリティカルな運用にも対応します。

5G接続は、インターネットアクセスが常に強力であったり利用できたりするとは限らない、農村地域やサービスが行き届いていない地域でも関心が高く、こうした地域でブロードバンドアクセスの信頼性と安定性を確保すれば、医療や教育の面でさらなる機会がもたらされる可能性があります。人々はインターネットを利用することにより、非常に基礎的な治療のために何時間も車を走らせるのではなく、一次医療の援助であるのか精神衛生の援助であるのかどうかにかかわらず必要な治療を受けることができます。また学生は、授業が在宅学習に移行したパンデミックのときと同じように、5Gによって授業で優秀な成績を収めるのに必要な教材へのアクセスを維持しています。

HPEとモバイルエッジコンピューティング

HPEは、多数のエッジ、共同配置施設、データセンターにわたるストレージとコンピュート向けの堅牢なクラウドポートフォリオを提供するEdge-to-Cloudカンパニーです。

HPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォームのようなソリューションにより、組織や企業はオンプレミスのアプリケーションとデータを仮想的に使用して特定の需要に対応し、イノベーションと展開を加速させて素早くビジネス成果を実現することが可能です。つまり、お客様は自社の環境のプライバシー、パフォーマンス、制御性を活かしながら、パブリッククラウドのシンプルさを得ることができるのです。また、データと処理がデータセンターの範囲内にとどめられることがないEdge-to-Cloudプラットフォームにより、データ資産の可用性が最大限まで向上してレイテンシが最小限に抑えられ、データレイクの構築と活用、および分析とAIを通じた重要な情報の抽出が可能になります。

HPE GreenLakeは、サービスとして利用することも可能であり、お客様は使用した分の料金を支払うだけで済むため、多額の初期費用や調達の遅延を伴うことなく新規プロジェクトを開始して、無駄の多いオーバープロビジョニングとアンダープロビジョニングに起因する中断のリスクの両方を排除できます。