オブジェクトストレージとオブジェクトストア

オブジェクトストレージとオブジェクトストアの定義

オブジェクトストレージは、オブジェクトと呼ばれる個別のユニットでデータストレージを管理する手法の1つです。オブジェクトストアは、データ分析ソフトウェアがオブジェクトのクエリを実行するプラットフォームです。


無限の容量を持つオブジェクトストレージは、以前はバックアップ、およびリカバリ機能向けの低コストのストレージと考えられていました。しかし、開発者がクラウドに移行し、ビジネスにおける分析が増加するなかで、膨大なデータ量とデータセットに対応できるS3やオブジェクトストレージが使用されるケースが増えてきました。

オブジェクトストレージの仕組み

オブジェクトストレージは、データのブロックを1つのユニットにまとめて、一意の識別子に豊富なメタデータを割り当てることで、オンプレミスまたは複数のネットワークシステムや地域を問わず、分散データプール内のあらゆる場所で各オブジェクトを簡単に検索できるようにします。

オブジェクトストレージではフラットアドレス空間を使用するため、他のシステムで使用されている階層型システムが不要になります。この方法ならスケールアップ/ダウンも簡単にでき、ストレージワークロードの変更に合わせて迅速に拡張または縮小できます。

また、保存されているデータを更新する場合、オブジェクトストレージシステムは、変更された一部のデータだけでなく、資産全体の新規コピーを保存します。そのため、オブジェクトストレージのデータは、他のシステムのデータに比べてより永続的になります。

 

残念なことに、メタデータの負荷が重ければ重いほど必要なオーバーヘッドも増え、データを修正するプロセスに時間がかかります。そのため、従来のオブジェクトストレージは、次のようなアクセス頻度の低いデータに適していました。

  • 障害またはデータ損失後のアーカイブ検索のためのバックアップ処理
  • 写真、過去の資料、音楽などの静的Webコンテンツ
  • ライトワンスのアプリケーション、または読み取り専用や頻繁に更新されないデータ

 

オブジェクトストレージ、ブロックストレージ、ファイルストレージの違い

データストレージには、オブジェクト、ブロック、ファイルの3つの方式があり、データアクセスのニーズに対応する方法がそれぞれ異なります。どの方式を選択すべきかは、ユースケースのいくつかの重要な特徴によって決まります。

最も古く、最もシンプルなデータストレージ方式であるファイルベースのストレージは、紙ベースのシステムと同様に、データを1つの情報としてフォルダー内に保存します。保存されているデータは簡単な経路でアクセスできるため、共有ファイル管理に適しています。しかし、階層型ファイリングシステムであることから、1つの特定の情報を見つけるのに時間がかかります。

ブロックベースのストレージは、システム全体に分散可能なユニットにデータを分割することで、より効率的なストレージを実現します。ただし、ブロックストレージでは、各データブロックに割り当てられるメタデータが一意の識別アドレスに制限されます。そのため、ブロックのオーバーヘッドは少なく済み、他のシステムよりも俊敏で効率的になる可能性があります。そうした無駄のなさから、トランザクションデータなど、頻繁にデータを変更するケースで極めて高いパフォーマンスを発揮します。

それに対して、オブジェクトストレージは、他のストレージシステムに比べてはるかに多くのメタデータを各ファイルに追加します。これには、アプリケーションの詳細、データ保護のレベル、保持ポリシーなどの属性に関連する情報など、コンテキスト情報やカスタマイズ可能な情報が含まれます。それによってユーザーは、大量の非構造化データに関するさまざまな分析を展開できます。また、オブジェクトストレージのもう1つのメリットとして、他の方式での階層型システムが不要になり、それによって拡張性が向上してさらに広範囲に分散したアクセスが可能になることがあります。

オブジェクトストレージとKubernetesの連携

Kubernetesとオブジェクトストレージが連携する仕組みを理解するには、基本的にはデータの増加に伴ってテクノロジーが陳腐化することを理解する必要があります。つまり、データ量が急速かつ継続的に増加していることが、テクノロジー開発サイクルの大幅な短縮につながっています。

Kubernetesは、急速に変化する環境に対応できるように設計されており、今ではオペレーターがコンピューティング、ネットワーキング、およびストレージインフラストラクチャを管理する方法として最も利用されています。Kubernetesでデフォルトのプラットフォームであるオブジェクトストレージは、Kubernetesが独自の構築/パッケージ/展開のフレームワークをサポートするうえで必要な柔軟性、拡張性、耐障害性を備えています。オブジェクトストレージにより、Kubernetesのオペレーターはプロビジョニングからボリューム配置までのあらゆるタスクを大規模に実行しつつ、オーバーヘッドを削減できます。

またアプリケーションがコンテナで実行されていると、オブジェクトストレージがそうしたアプリケーションの状態を維持します。この点が重要なのは、Kubernetesではオブジェクトストレージ自体をコンテナで実行してインフラストラクチャの自動化を管理できるようにする必要があるためです。つまり、オブジェクトストレージを利用することで、Kubernetesはステートレスかつポータブルな環境でインフラストラクチャをオーケストレーションできます。

 

HPEのオブジェクトストレージソリューション

オブジェクトストレージのユースケースが拡大したことで、複数のソリューションを提供するというHPEのニーズも増大しました。

HPE Solutions for Scalityは、次のような汎用オブジェクトストレージに最適なソリューションです。

  • 大規模なスケールダウンから単一ノードのエッジまで、パブリッククラウドストレージに代わるオンプレミスのストレージ
  • メディア、およびすぐに共有可能なデータレポジトリ
  • Splunk SmartStore、医療画像、HPCアーカイブなど、データオフロード用の次の階層のストレージ
  • シンプルなエンタープライズバックアップ ターゲットストレージ 

 

HPE Ezmeral Data Fabricは、分析、AI、MLなど、高いパフォーマンスとスケーラビリティを必要とするワークロードに最適です。こうしたユースケースには、分析、調査、IoT、ビジネスインサイトなどが含まれます。HPE Ezmeral Data Fabricは、オンプレミス、マルチクラウド、エッジ環境にわたってファイル、オブジェクト、NoSQLデータベースおよびストリームを単一の統合データインフラストラクチャおよびファイルシステムに統合する、業界初のソリューションです。アプリケーションとユーザーが場所を問わず、信頼できるデータに直接アクセスできます。