QLCとTLCの比較 QLCとTLCの違い
QLC (クアッドレベルセル) とTLC (トリプルレベルセル) は、フラッシュメモリSSD (ソリッドステートドライブ) の2つのタイプであり、それぞれに異なる強みがあります。QLCは低コストで大容量のストレージを実現し、読み取り中心のワークロードに最適ですが、TLC SSDは高いパフォーマンスと耐久性を備え、混合ワークロードや書き込み中心のワークロード、パフォーマンス重視のクリティカルアプリケーションに最適です。
- QLCとTLCの定義
- QLC SSDの利点
- QLCとTLCの比較
- QLCを搭載したHPE製品
QLCとTLCとは
TLC (トリプルレベルセル) とQLC (クアッドレベルセル) は、SSD (ソリッドステートドライブ) で使用されるNANDフラッシュメモリの一種で、メモリセルあたりに保存できるデータのビット数が異なります。
- TLC SSDはセルあたり3ビットのデータを使用し、8個の電圧状態が表現可能であり、QLCより高いパフォーマンスと信頼性を実現します。
- QLC SSDは、セルあたり4ビットのデータを使用し、16個の電圧状態を表現できます。容量と価格に重点を置いたユースケース向けで、TLCよりパフォーマンスが遅く、耐久性も低いため、書き込み負荷の少ないアプリケーションに適しています。
QLC SSDのメリット
QLC (クアッドレベルセル) SSDベースのストレージアレイは、容量集約型/読み取り中心のワークロードに最適な価格とパフォーマンスのバランスを実現します。
QLC SSDは低コストで大容量のストレージを実現し、メディアのストレージやアーカイブの目的に適していますが、TLCなど他の種類のSSDと比較するとパフォーマンスと耐久性は低くなります。
主なメリット:
- 高いストレージ密度
- 容量の増加: QLCテクノロジーにより、SSDはTLCドライブと比較して同じ物理スペースに多くのデータを保存できます。容量を大きくできるので、QLC SSDは、データアーカイブ、メディア ストレージ、バックアップなど、低コストで大容量のストレージを必要とするユーザーに最適です。
- 大容量ストレージ向けの優れたコスト効率
- 手頃な価格の大容量ドライブ: QLC SSDは一般にTLC SSDよりも安価なので、大容量を低コストで実現します。そのため、高額な費用をかけずに大容量のストレージを必要とする予算重視のユーザーにとって、QLC SSDは最適な選択肢となります。
- GBあたりのコスト削減: 最高レベルのパフォーマンスよりもストレージ容量を優先するユーザーにとって、QLCドライブは他のSSDタイプと比較してギガバイトあたりのコストが低いため、大量のストレージ領域を必要とするエンタープライズアプリケーションにとって魅力的です。高密度ストレージ容量であるために、必要なラックスペースも少なくなります。
- 低消費電力: 従来のHDDと比較して、QLC SSDは消費電力が少なくなります。
- 読み取り集中型のワークロードに最適
- 読み取り負荷の高いタスクに最適化: QLC SSDは、メディアの消費やファイルの保存など、書き込みよりも読み取りが集中するワークロードのシナリオで優れたパフォーマンスを発揮します。保存されたデータを頻繁に変更するのではなく、保存されたデータによくアクセスするユーザーにとって、QLCドライブは十分なパフォーマンスを提供します。
- メインストリームと混合: QLC SSDは、レイテンシの影響を受けにくいVMware (SAP、Oracle、Microsoft SQL Server) データベースアプリケーション、開発/テスト、分析などのメインストリームおよび混合ワークロードに最適です。
- 高速読み取り速度: QLC SSDはハイエンドSSDよりも低速ですが、読み取り速度の点では従来のHDDを上回り、ブート時間、ファイルアクセス、アプリケーションの起動が改善されます。
- アーカイブやコールドストレージに最適
- 長期保存に最適: QLC SSDは、頻繁な更新を必要としない大量のデータをアーカイブするための高性能バックアップと階層化に最適化されています。バックアップ、メディアライブラリ、クラウド ストレージソリューションなどのタスクに対して、QLC SSDは手頃な価格で十分な容量を提供します。
- 汎用のHDDよりも高速
- 回転式ドライブよりも高速: QLC SSDはTLC SSDよりも低速ですが、それでも機械式であるハードドライブに比べると速度が大幅に向上します。このため、QLC SSDは、優れたパフォーマンスを備えたコスト効率の高いソリューションを求め、HDDからSSDにアップグレードするユーザーにとって最適な選択肢となります。
QLC SSDとTLC SSDの選択基準
QLC (クアッドレベルセル) とTLC (トリプルレベルセル) SSDを選択する企業は、それぞれ特定のアプリケーションに適した強みがあることを考慮する必要があります。
考慮しなければならない主な要素がいくつかあります。
ワークロードタイプ
- QLC SSDが適しているのは、読み取り負荷の高いアプリケーションです。このアプリケーションではデータは頻繁にアクセスされますが、書き込みや変更はそれほど頻繁に行われず、レイテンシは最大の懸念事項ではありません。これらのシナリオでは、QLC SSDの書き込み速度が遅く、耐久性が低いことは、大容量のストレージと低コストとのトレードオフとして許容できます。
ユースケースの例:
- メインストリームおよび混合プライマリワークロード、レイテンシの影響を受けにくいデータベースアプリケーションなど、コストとパフォーマンスのバランスをとることが主な考慮事項となる場合です。
- セカンダリストレージターゲット、高性能バックアップとディザスタリカバリ、または階層化に最適化され、開発/テストや分析などのアプリケーションを実行する性能が必要な場合です。
- TLC SSDが適しているのは、書き込み集中型または混合ワークロードです。このワークロードではより高い耐久性、より低いレイテンシ、より高速な書き込み速度が求められます。TLC SSDは、より要求の厳しいワークロードに適しています。
ユースケースの例:
- データベース: トランザクションシステムなど、データが頻繁に書き込み、変更、読み取られる場合です。
- 仮想化: 高速で信頼性の高いデータアクセスと頻繁な読み取り/書き込み操作を必要とする仮想マシン向けです。
- 高性能コンピューティング (HPC): パフォーマンスと耐久性がクリティカルであるデータ分析、AI、リアルタイムアプリケーションなどのワークロード向けです。
- クラウドストレージ: SaaSプラットフォームやエンタープライズデータ処理など、読み取りと書き込みの両方のパフォーマンスが重要なアプリケーション向けです。
パフォーマンス要件
- QLC SSDは容量とコストがパフォーマンスよりも重要である状況に最適です。QLC SSDは書き込み速度が遅いものの、読み取りパフォーマンスでは従来のHDDを上回っているため、大規模でパフォーマンスの低いストレージのニーズにも適しています。
- 大容量ストレージを必要とする一方でパフォーマンス要件が重視されない企業は、ビデオストリーミング、データアーカイブ、バックアップソリューションなどのアプリケーションでQLCドライブのメリットを享受できます。
- TLC SSDはより高いIOPS (1秒あたりの入出力操作数)、順次読み取り/書き込みの高速化、または耐久性の向上が必要な企業にとって最適な選択肢です。以下の用途に適しています。
- ミッションクリティカルなアプリケーション、高速な読み取り/書き込み操作がビジネス機能に直接影響します。
- 低遅延環境、迅速なデータアクセスと処理のために高速パフォーマンスが求められます。
耐久性と信頼性
- QLC SSDは、TLCよりも耐久性が低下します。これはセルあたりに保存されるビット数が多い、つまり摩耗するまでの書き込みサイクルが少なくなるためです。書き込み頻度の高い環境には適していませんが、アーカイブまたはコールドストレージ向けの書き込み操作が頻繁に行われない場所では許容できます。
- 中程度の耐久性を備えたコスト効率の高いストレージを必要とする企業は頻繁に書き込まれないデータにはQLC SSDを活用できます。
- TLC SSDではより高い耐久性があり、QLC SSDよりも多くの書き込みサイクルを処理できます。そのため、データが頻繁に書き込まれたり、更新されたり、削除されたりする環境に最適です。
- ミッションクリティカルなワークロードまたは頻繁な書き込みを必要とするアプリケーションを取り扱う企業向けで、TLC SSDは、早期のドライブ障害を回避するために必要な耐久性と信頼性を備えています。
コストに関する留意事項
- QLC SSDはTLCドライブよりも通常は安価であり、これはストレージ密度が高いためで、大容量ストレージが必要な企業に最適な選択肢です。コールドデータストレージ向けで、つまりパフォーマンスはそれほど重要ではないが容量が重要な場合で、QLC SSDは優れた経済性のソリューションになります。
- TLC SSDは一般にQLCドライブよりも高価ですが、それでも、パフォーマンス、耐久性、コストのバランスが優れています。より高いパフォーマンスと耐久性を必要とするが、コストを管理する必要がある企業において、TLC SSDは、要求の厳しいアプリケーションにとって手頃な価格のオプションです。
ユースケース
- QLC SSDは次のような場合に最適です。
- メインストリームおよび混合プライマリワークロード、レイテンシの影響を受けにくいVMware、(SAP、Oracle、Microsoft SQL Server) データベース アプリケーションなどで、コストと価格パフォーマンスのバランスを実現します。
- コールドストレージ: ほとんどアクセスされないデータをアーカイブします。
- バックアップとディザスタリカバリ: 高性能なバックアップ、ディザスタリカバリ、階層化に加え、開発/テストや分析などのアプリケーションを実行する性能が必要です。
- データレイク: データは頻繁に読み取られるが、書き込みや変更は頻繁に行われない大規模なデータレポジトリです。
- コンテンツ配信: 大量のデータが主に読み取りで提供されるストリーミングサービスまたはメディアストレージです。
- TLC SSDは次のような場合に最適です。
- データベースアプリケーション: 大規模なOLTP (オンライントランザクション処理) データベースなど、高速パフォーマンスがクリティカルで、レイテンシの影響を受けやすいワークロードを実行するための高速読み取り/書き込みパフォーマンスが必要です。
- 仮想化環境: 頻繁にデータの読み取りと書き込みが行われる仮想マシンとコンテナを実行します。
- クラウドコンピューティング: Webアプリケーションやデータサービスなど、読み取りと書き込みのパフォーマンスの組み合わせを必要とするアプリケーションです。
- エンタープライズワークステーション: ビデオ編集、3Dレンダリング、ソフトウェア開発など、頻繁なデータ処理を伴うワークロードです。
将来の拡張性とアップグレード
- QLC SSD (スケールアウトストレージ向け)
- QLCは、GBあたりのコストが低いため、ストレージインフラストラクチャを急速に拡張することを計画している企業にとってより魅力的です。これが特に有用なのは、ビッグデータのニーズがある、または、長期間にわたって膨大なデータセットを処理する企業です。
- TLC SSD (柔軟な拡張向け)
- TLC SSDはパフォーマンスとスケーラビリティの両方に対応するため、企業が高負荷のワークロードを増やすことを計画している場合や、将来的にストレージ要件がより厳しくなることが予想される場合、長期的な投資として適しています。
まとめ
- QLC SSDを選択するのは、低コストで大容量のストレージに優先度がある、特に読み取りが多い、書き込み速度と耐久性がそれほど重要ではないワークロード、アーカイブストレージ、またはそれほど重要でないアプリケーションの場合です。
- TLC SSDを選択するのは、データベース、仮想環境、パフォーマンス重視のクリティカルアプリケーションなど、より高い耐久性とデータへの高速アクセスを必要とする混合または書き込みが多いワークロードに対してです。
QLC SSDオプションを提供しているHPE製品
HPEは、Alletra Storage MPハードウェアプラットフォーム向けにQLC SSDを提供しています。