ストレージ仮想化
ストレージ仮想化の概要と使用状況
エンタープライズストレージ環境でのストレージ仮想化とは、IT部門が単一の「仮想」ストレージデバイスに対応できるように物理ストレージデバイスをプールする手法です。今ではクラウドモデルなどに人気を奪われていますが、ストレージ仮想化は、 (物理ストレージデバイスが直接アドレスされる) 「ベアメタル」ストレージ上で大きな運用効率とコスト効率を実現するものでした。組織は仮想化ストレージにより、適合性に関する懸念を軽減してストレージ環境のパフォーマンスとセキュリティを向上させていました。
仮想化ストレージを利用する際に、管理者が考慮しなければならなかった問題:
- 適合性と相互運用性: ストレージ仮想化環境には、基盤となるハードウェアインフラストラクチャ、ネットワークコンポーネント、サーバー、オペレーティングシステム、管理ツール、およびハイパーバイザーとの適合性が求められます。シームレスな統合を実現し、APIを自動化ツールと統合してオーケストレーションと統合を行えるようにするには、NFSやファイバーチャネルなどのプロトコルに対応している必要があります。
- パフォーマンスとレイテンシ: クリティカルなアプリケーションには、仮想化ストレージ環境で対応しなければならないパフォーマンスの要件があります。管理者は、ストレージコントローラー機能、ネットワーク帯域幅、ディスクのI/O容量、キャッシュメカニズムを評価し、それらがパフォーマンスとレイテンシに与える影響を把握する必要があります。
- データのセキュリティと完全性: 仮想化ストレージ環境は、転送時および保存時のデータのセキュリティを確保し、きめ細かいアクセスおよび認証制御を行って不正なアクセスを阻止するために、データ暗号化をサポートする必要があります。仮想化ストレージで強力なデータ保護実現するために必要となるのが、堅牢なバックアップおよびディザスタリカバリソリューションです。
ストレージ仮想化がクラウドストレージモデルに適している理由
ストレージ仮想化という手法は数十年前からありますが、それが (膨大な数の個別のストレージデバイスが大量の仮想ストレージプールに仮想化される) クラウドベースのストレージの基盤となりました。近年では、ストレージ仮想化は主にクラウドストレージモデルに取って代わられており、エンタープライズITは、先ほど述べた仮想化ストレージを展開して管理するという課題をクラウドベンダーに委ねることで多くのメリットを得ています。
クラウドコンピューティングモデルでは、VMおよびアプリケーション管理者がいくつかのパラメーター (ブロック、ファイル、オブジェクトなどのストレージタイプ、容量、パフォーマンス、帯域幅) を使用して必要なストレージを定義すると、クラウドベンダーはすぐに、保有する仮想化ストレージプールから必要なストレージを利用できるようにします。その裏で、クラウドアーキテクチャーが、プロビジョニング、構成、保護など、かつてはストレージ管理者によってデータセンターで実行されていたあらゆるタスクを実行します。
クラウドモデルの運用上のメリットは明らかであり、エンタープライズITは、複雑化する仮想化ストレージ環境の管理に頭を悩ませる必要がなくなり、事業部門はプロビジョニングの時間を大幅に短縮できます。クラウドストレージでは、ストレージリソースにオンデマンドでアクセスできるため、データ管理のワークフローが大幅に簡素化されます。それによって価値実現時間も短縮され、デジタルトランスフォーメーションを迅速に達成できます。
コスト面では、クラウドモデルによってストレージリソースの利用に関する企業の選択肢が大幅に増え、柔軟性が向上します。通常、クラウドベンダーは、クラウドストレージの利用料金をOPEX型の従量制課金方式で請求しますが、最近では、最新のクラウドサービスにCAPEXオプションも含まれるようになり、企業はオンプレミスストレージのデータ主権とセキュリティというメリットに、クラウド運用エクスペリエンスを組み合わせて利用できます。
ストレージ仮想化の仕組み
ストレージ仮想化では、物理ストレージハードウェアが仮想ボリュームにミラー化されます。シンプルな仮想ストレージ環境を構築するには、複数の物理ディスクを組み合わせて、単一サーバーを使用するグループを構成する必要があります。仮想ストレージ、または論理ストレージのブロックが同一サーバーに割り当てられ、入出力 (I/O) トラフィックのリダイレクトをサポートします。
物理ディスクは、オペレーティングシステムとアプリケーションがストレージにアクセスして使用できるようにする仮想化レイヤーによって仮想ボリュームから分離されます。仮想ストレージソフトウェアは、I/O要求を受け取ると、ストレージプール全体の中で適切なストレージデバイスに転送します。
物理ディスクそのものは、小規模なデータブロック (または、論理ユニット番号 (LUN)、論理ボリューム (LV)、RAIDグループと呼ばれるオブジェクト) に分割されます。これらのブロックが、仮想ディスクとしてリモートサーバーに提供されます。これは、仮想化環境でストレージプール全体を構成するストレージデバイスのグループではなく、サーバーの物理ディスクのように見えます。
より複雑な環境では、RAIDアレイが仮想ストレージとして稼働できます。この場合、複数の物理デバイスが単一のストレージデバイスのように機能し、バックグラウンドでデータをストライピングして複数のディスクに複製します。このプロセスによってI/Oパフォーマンスを向上させるとともに、単一ドライブでの障害からデータを保護します。
物理ドライブからデータにアクセスする方法には、仮想化ソフトウェア向けの追加の手順が必要となります。物理ストレージデバイスと仮想ストレージデバイスの間に障壁を設けるだけでなく、仮想化ソフトウェアがメタデータを使用したマップを作成し、保存されているデータの場所を迅速に特定できるようにします。ソフトウェアが、データ特定の時間をさらに短縮するアルゴリズムを作成するケースもあります。
仮想ストレージは、ブロックレベルとファイルレベル両方のストレージ環境に構築できます。SANを仮想化するには、ホストとストレージアレイの間に変換レイヤーを追加する必要があります。このタイプのストレージ仮想化では、サーバーが、個々のストレージアレイ上のLUNではなく、仮想化LUNにリダイレクトされます。こうした仮想化LUNは、仮想化デバイス上に保持されます。NASを仮想化するには、ファイルレベルでアクセスされるデータと、ファイルの物理的な保存場所との間の依存関係を削除する必要があります。
ストレージ仮想化のタイプ
ストレージを仮想環境に適用する方法に、ホストベース、アレイベース、ネットワークベースがあります。
ホストベース
HCIシステムやクラウドストレージで使用されることの多い、ホストベースの仮想化では、ソフトウェアを利用してトラフィックを転送します。この方法では、物理ストレージをほぼすべてのデバイスまたはアレイに結びつけることができます。ホスト、または複数のホストで構成されたハイパーコンバージドシステムは、企業の仮想マシン (VM)、ファイル共有にアクセスしているPC、クラウドからデータにアクセスしているサーバーなど、あらゆる構成のゲストマシンに仮想ドライブを提供します。
アレイベース
アレイベースのストレージ仮想化では、サーバーが物理的に配置されており、どのアレイにアクセスしているか、ストレージにアクセスしているサーバーやユーザーからは確認できません。この場合、ストレージアレイはプライマリストレージコントローラーとしての役割を担っており、仮想化ソフトウェアを使用して他のアレイからストレージリソースをプールします。またアレイは、異なるタイプの物理ストレージを、デバイスの個別グループではなく、階層として示すことも可能です。こうした階層は、各種アレイ上のソリッドステートドライブ (SSD) またはハードディスクドライブ (HDD) で構成できます。
ネットワークベース
ネットワークベースは、ストレージ仮想化の最も一般的な形態です。この場合、FCまたはISCSI SAN内のすべてのストレージデバイスが単一のネットワークデバイスで接続されています。このような相互接続されたデバイスは、それ自体がストレージネットワーク内の単一の仮想プールとして示されます。
サーバー仮想化とストレージ仮想化の違い
組織は数種類の仮想化テクノロジーから選択できますが、最適なタイプはビジネスニーズによって異なります。多くの企業ではリモートワークがほぼ定着したため、ワークプレイス環境には仮想デスクトップがあります。また、こうしたリモートワーク環境の一部にアプリケーション仮想化が含まれます。デスクトップでは、アプリケーションのOSがデスクトップ自体に物理的にインストールされていなければ、必要な作業を行う際に利用できるリソースが少なくなるためです。
ただし、仮想化を進める理由は他にもあります。サーバーが仮想化されていると、企業は高可用性に加えて、より効率的なディザスタリカバリを実現できます。そのためにOSがハードウェアから分離されており、OSにアクセスするマシンをファイルとして扱うことができます。こうしたサーバーはファイルとしてSANに保存できるため、データアクセスで高いモビリティが得られます。1台のサーバーに障害が発生した場合でも、すべての仮想サーバーがSANに保存されているため、別のサーバーを呼び出して代わりにアクティビティをホストできます。
サーバー仮想化では、ハードウェアをオンデマンドで調整することも可能で、より柔軟なシステムを構築できます。ワークロードが減ればサーバーを停止できます。反対にワークロードが増えれば、そのサーバーを再稼働できます。このように、常時稼働させるサーバーを削減することで、電力/冷却のコストはもちろん、ほとんどの時間アイドル状態となっている冗長ハードウェアのコストを削減できます。
ストレージ仮想化では、(サーバー仮想化と併用する場合は特に) 可用性も向上します。ストレージが仮想化されるときに、特定のサーバーとペアになることはありません。そのため、ストレージを複数のソースから管理し、単一のレポジトリとして使用することができます。また、多くのサーバーは、SANに保存されているデータにアクセスできるため、SANの利用が大幅に簡素化されます。
ストレージ仮想化のメリット
- コスト削減: 仮想ストレージでは、従来のエンタープライズストレージアーキテクチャーで必要とされる、ディザスタリカバリ目的の一般的なハードウェア冗長化が不要になり、購入が必要なアプライアンスやソフトウェアライセンスの数が少なくなります。それによって膨大な初期投資の負担を回避できます。
- 時間短縮: 仮想化ストレージでは、ダウンタイム (計画的および計画外) を削減できるだけでなく、アップグレードに伴う時間と運用中断を大幅に短縮できます。
- 拡張性: 仮想ストレージでは、組織が将来の長期的なストレージニーズを予測する必要がないうえに、そのすべての容量の料金を事前に支払う必要もありません。代わりに、IT部門が動的プロビジョニングを活用して、ニーズの変化にオンデマンドで対応できます。
- 管理の簡素化: 仮想ストレージではリソースの利用が簡素化および改善され、アプリケーションを中断することなくストレージの追加/削除が簡単に行えます。また、シームレスなデータ移行も可能になり、ストレージプール全体で高度な機能の利用を効率化できます。
- リスクの軽減: ディスクドライブ、ストレージコントローラー、または電源装置で障害が発生するような場合でも、それぞれがすでに仮想アレイ上にミラー化されているため、運用中断のリスクが大幅に軽減されます。こうした仮想の冗長性により、パフォーマンスの低下が制限され、ストレージの効率と柔軟性が向上します。
- 生産性の向上: 仮想ストレージは100%の可用性を実現するだけでなく、アプリケーションやサービスの展開までの時間を短縮して迅速に価値を実現することができます。
- 効率の向上: ストレージの高速化と容量利用率の改善が最大のメリットです。また、データアクセスと処理の安定性も向上します。さらに、仮想ストレージでは100%の使用率が確保されるため、容量が不足する可能性はほぼありません。
HPE GreenLakeが提供する卓越したクラウドストレージモデル
HPEは、HPE GreenLake Edge-to-Cloudプラットフォームでの高度なストレージサービスを通じて、近年のクラウドストレージモデルのイノベーションを牽引してきました。お客様は、Saasベースのバックアップおよびディザスタリカバリサービスによって完全に保護された、オンデマンドかつエンタープライズグレードのストレージをいつでも利用することができます。これらのソリューションは、直感的なクラウドエクスペリエンスでデータ管理を簡素化するとともに、オンプレミスまたはクラウドでクラウドモデルのストレージを実現することでお客様の柔軟性を向上させます。
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